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父さんは確信犯?
2014/01/21(Tue)
仕事に出かけるイアンを
見送りに玄関まで出たところ、


車に乗り込もうとするイアンが
元気のない声で
ぼそっとつぶやいたことには、


「昨日の朝、
ユインが歩いているのに追いついたんだけどさ」



うん。それで、


「何でだか、あいつ。
こりゃまずいなって顔してさ。
他人のふりして、そっぽ向きやがってさあ」



うん。よ~くわかるよ。


「そりゃあ。イアンちゃんが
ユインと同じ学校の子たちがゾロゾロ歩いている通学路で
わざわざ車を徐行させて、


大声で、
『アイ ラブ ユ~。ユイ~ン!』
なんか叫ぶからじゃあないの?」



「うん。まあ、そうなんだけどさあ」


「でしょ。でしょ~っ」 


でも、そんなことばかりしてると、
そのうちユインに
家の中でも他人のふりされかねないわよ。


と言おうとしていると、


「じゃ、ま、行ってくるよ」


さっさか車に乗り込むので、


「今朝は、叫ばない方がいいと思うけど」


と言うと、


「うん。わかってるさ。
今朝は、ちょっと趣向をかえて
投げキッスでもしてやろうかなって思ってるんだ」



それから、バァ~イと片手をさしあげると
通学中のユインに向かって車をばく進させていく
まったく懲(こ)りないトーサンなのだった。









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子どもはおとなの父である
2014/01/21(Tue)
子どもの成長は速い。速いと感じる。
それはもしかしたら、
おとなが成長しないからなのかもしれない。


うっかりしていると
いつのまにか追いこされていて、
すごすごと後ろをついていくなんてことになりかねない。


まあ、子どもはそうでなくちゃあいけない。
英国ロマン派の詩人ウィルアム・ワーズワースも言っている。
「子どもはおとなの父である」と……。


学校から帰ってくるやいなや、
それまでパソコンの座席を暖めていた
わたしを追いやって、
パソコンの前に陣どるユイン。


イアンが帰ってくるまでパソコン画面にはりついて
お気に入りのサイトをチェックしたり、
パソコンゲームに興(きょう)じることに余念がない。


リビングのまん中に
学校カバンが放りっぱなしになっている
こともしばしば。


仕事から帰ってきたイアンが
それを見つけて声をはりあげる
こともしばしば。


という今日も、
仕事から帰ってくるなり、
イアンがパソコンに向かうユインにかけた第一声が、


「どうして、まだこんなところに
学校のカバンが転がってるんだ~っ!」
 


何しろ軍隊あがり、
イアンが本気になるとそんじょそこらの
カミナリ親父どころじゃあない。


まだこのくらいの口調のときに
速やかに対処しておくのが賢明なやり方だと
ユインは幼いころから心得ている。


そこで、
しおしおと学校カバンを引きずって
片づけ体勢には入ったものの、


「そりゃ、トーサン。ぼくが学校から帰ってから、
まだ誰もそこからカバンを動かしていないからだよ」
 


シラっとした顔でイアンに言い返したかと思うと、
キッチンで夕食作りにいそしむわたしの方に向き直り、
ニカっと八重歯を見せ、親指立てて、グーッ!


おおっ。
ユインも、けっこうやるじゃ~ん。


カバンを片づけると、
今度は、キッチンまでやってきたユイン。


ぬぼ~っとした声で、


「今日、何食べるの~」 


背中を丸めて
大儀そうに頭を抱え込むので、


「もしかして、また立ちくらみしてる?」


「うん。ちょっとね」


「母さんも立ちくらみするけど、
ユインはもう母さんよりずっと背高いもんね。
そりゃあ、血が脳までとどくのに長く時間かかるよね」



と言ったら、


「それに高いところの方が空気が薄いからね」


酸欠の頭でよくとっさにそんなこと思いつけたもんだ。









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ぼくは、何人?
2014/01/21(Tue)
イギリスは、
4つの国が寄り集まってできている連合王国。
つまり、寄り合い所帯(じょたい)の国家である。


その4つの国とは、
イングランド、ウェールズ、スコットランドと、
アイルランドの一部である北アイルランド。


だから、イギリス人は、
自分たちをイギリス人と認識するよりは、
イングランド人、ウェールズ人、スコットランド人、
あるいは、アイルランド人のいずれかであると認識している。


イアンの自己紹介の決まり文句も、


「はじめまして。
わたしはイアンです。
スコットランド人です。どうぞよろしく」



血統的に言うと、
イアンの父方の祖母はアイルランド人なので、
イアンは4分の3がスコットランド人で、
4分の1はアイルランド人ということになるのだが、


イアン本人のアイデンティティーは
スコットランド人である。
イギリス人であるとは名のらない。


幼いころのユインは、


「トーサンは、スコティッシュ(スコットランド人)。
母さんは、ジャパニーズ(日本人)。
そして、ぼくは、イングリッシュ(イングランド人)」



と言っていた。


父がスコットランド人で、
母が日本人なのに、
そのあいだにできた子供が
イングランド人のはずがないではないか。


「どうして、イングリッシュなの?」


と聞くと、


「だって、トーサンはスコットランド訛りの英語を話すし、
母さんはジャパニーズ(日本語)を話す。
そして、ぼくはイングリッシュ(英語)を話すでしょ。
だから、ぼくはイングリッシュ(イングランド人)なんだよ」



「いやいや、そういう問題じゃあないんだよ。ユインくん。
母さんだっていくらヘタとは言え日本語ばかりじゃあない、
英語も話すではないの。



それに、イングリッシュを話したとしても、
ユインは日本人の母さんと
スコットランド人の父さんのあいだに生まれてきたんだよ。
そして、ユインだって日本語を話すじゃあないの」



と、再三再四説明し、
言い聞かせても納得しなかった。


どうやら、幼い日のユインには主言語として
「イングリッシュ (英語)を話す人々」=「イングリッシュ(イングランド人)」
という図式ができあがっていたらしい。


そのユインが小学校を終え、
コンプリヘンシブスクール(中学+高校)に入学したころのこと。


もうそろそろユインも、
「イングリッシュ」という単一の英単語が、
言語と何人であるかの2通りの意味を持つことを
理解するようになっているのではないかと思った。


そこで、幼いころ、
何度繰り返しても埒(らち)の明かなかった質問を
むし返してみたのだった。


「ねえ、ユイン。
今は、自分は何人って思ってるの?」



「イングリッシュ」


えっ。
今でも、そんなに自信ありげに言うのか。


「でもさ、ユイン。
ユインのトーサンはスコティッシュで、母さんはジャパニーズなら、
ユインの体の中にはイングリッシュの血は一滴も流れてないんだよ」



「うん。わかってるけどさあ」


「友だちも、ユインはジャパニーズだって言うんでしょ?」


「うん。だから、まあ、今は、ジャパニーズだとも思うんだけどお」


「そうだろ、そうだろ。
だって、ユインの8分の1はアイリッシュで、
8分の3がスコッティッシュで、
半分がジャパニーズなんだからね。


遺伝的にはジャパニーズの部分が
一番多いってわけだからね」



「でも、やっぱり、
ぼく、イングリッシュだよ」



そこへ、


「まあ、イングランドで生まれて育ってるんだからな。
そういう認識になるってわけさ」



イアンはいやに物わかりのいい父親の口調で言う。


今のところ、未成年のユインは、
イギリス国籍と日本国籍の2つの国籍を持っている。


イギリス政府は成人の二重国籍も認めているので、
とがめだてをすることはないのだが、
日本政府は成人の二重国籍者を認めていない。


だから、二重国籍を持った子供たちは成人に達すると、
その後の保留期間の2年以内に、
日本国籍を保持したい場合はもうひとつの国籍を
放棄しなければならない。


このままでいくと
ユインがイギリス国籍を放棄することはない
ような気がする。


ということは、
ユインは、将来日本人ではなくなる。


それがユイン自身の選択なら
わたしがとやかく言うことは何もない。
アイデンティティーは
あくまで本人の中で確立されるものなのだから。


むしろ問題は、
アイデンティティーがしっかり本人の中で確立されなかった場合に
生じてくるのかもしれない。


将来、
ユインが日本人に自己紹介するときには、
きっとこんなふうに言うことになるのだろう。


「はじめまして。ぼくはユインです。
イギリス人です。どうぞよろしく」



(日本語では、
イングランド人とも、イングリッシュとも言わないから
何人の部分は、やっぱり、イギリス人)


そう日本語で自己紹介できるだけじゃあなくて、
日本語でもっともっとたくさんのことが話せて理解できる
イギリス人に育っておくれ。


それがおとなになっていくユインに託す
日本人の母さんの願いなのだからね。









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いつもとはちょっとちがった朝のできごと
2014/01/21(Tue)
トントントンと階段をかけ上り、
正面のドアを押し開けると、
むふふっ。


夏休み中のユインが、
ふとんと格闘しているがごとき姿でベッドの上に身を横たえ、
すやすやと安らかな寝息をたてている。


そこへ、


「ユ~インち~。母さん、来た~」


と言いながら、
ユインのベッドに飛びのると、


「ううん、ああ」


もそもそと場所をあけてくれるユイン。


ユインの体温でむわ~んと
あっためられたベッドが心地いい。


こうして学校が長期休みの平日に
ユインを起こしに来たついでにユ
インのベッドにもぐり込み、


たわいのないことを
ぼそぼそ話す時間が
何にかえがたくいい。


でも、もうあとどのくらい
こんなことしてられるのかなあ。


ユインは、あと4か月あまりで、
12 (トゥエルブ) 歳から13(サーティーン)歳になって
ティーインエイジャーと呼ばれる年齢になるんだなあ
などと考えていると、


「みやこちゃん。ぼく、ちょっと考えてたんだけどさあ」


ふーん。
いったい、何、考えてた?


「ポープ(教皇)は、
どうしてカーディナル(枢機卿)たちに選ばれるんだろうねえ」



えっ……!?


(英語がネイティブのユイン。
英語で考えて日本語で話すので、
知らない日本語の単語は日本語訛りの英語になる。
ちょうど英語をカタカナ書きしたみたいな)


「選挙で選ばれるんじゃあないの。
ポープ(教皇)が選ばれたら、
白い煙とか、赤い煙とかが煙突から出るんじゃあなかったっけ?」



「うん。だから、ポープ(教皇)は、
カーディナル(枢機卿)に選挙で選ばれるんだけどおー」



ああ、そうだったのか。
「どうして」って選ばれる方法を聞いてたんじゃあなくて、「
なぜ」って理由を聞いてたのか。


「ポープ(教皇)って、
ゴッド(神)のレプレゼンティティブ(代理人)だろ。
なのに、どうして下の人がボスを選ぶのかなあ」



うーん。こりゃまた、ユインは、
母さんには予想もつかない問題を考えてたんだねえ。


「ゴッド(神)がいるなら、
ゴッド(神)がポープ(教皇)を選べばいいのにねえ」



「うん。まあ、そう言われればそうよねえ」


と、とりあえず相づちをうちながら、
日本語はまだまだたどたどしいながら
体の方はぐんぐん大きくなっているユイン、


やっぱり、頭の中にも、
わたしの知らないあいだに
わたしの知らないことを
いっぱい詰め込んでいたんだと思った。


そして、そのわたしの知らない知識を総動員して
これから神の存在についての問題に
自分なりの答えを見い出していくのだろう。


あれっ。
そのとき、宗教上の深遠な問題に
頭を悩ませているユインの困惑する表情に、
わたしは、とんでもないものを見つけてしまった。


ユインの鼻の下に、
ぷくんと赤くはれ上がっている部分がある。
赤くはれた皮膚の下に透けて見える白い油脂。


それは、紛れもない、
ユインにできたはじめてのニキビだった。


そのあと、階下におりて朝食をとろうと、
キッチンユニットからお皿を取り出したときのことだった。


そのお皿は、ユインが2歳のときイギリスへ来た
日本のじいちゃんとばあちゃんが買ってくれたものだった。
「くまのプーさん」の絵がらのついたプラスティック製で、
スープ皿とナイフとフォークのセットになっていた。


さすがに幼児用のナイフとフォークは
すでに使わなくなっていたが、
お皿だけは、今も、毎朝、愛用し続けている。


キッチンユニットから取り出した
「くまのプーさん」のお皿を宙にうかせたまま、
ユインが舌足らずな日本語で遠慮気味に聞いた。


「みやこちゃん。このお皿、もう使わなくてもいい?」


「う、うん。いいよ」


わたしの口からは、
とっさにそれだけしか言葉が出てこなかった。


ユインは「くまのプーさん」のお皿をわたしに手渡すと、
キッチンユニットから別の無地の皿を引っぱり出して、
その上に自分の朝食のパンをのせた。


「くまのプーさん」のお皿を
キッチンユニットにしまいながらわたしは思った。


そっか。
じゃ、この「くまのプーさん」のお皿は、
これからは母さんが使うことにするかな。









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「母の日」の苦悩
2014/01/21(Tue)
家族が
それぞれの思いをつむぐ
「母の日」。


しかし、それは、
「母の日」以前に
すでにはじまっていた。


そして、
その全容が発覚したのは、
「母の日」の翌日のことだった。


イアンが雷を落とした。
前夜、イアンが準備していた校への書類を
家に忘れていったうえに、
先週の宿題を再び持ち帰るのを忘れたユイン。


丸一日、
三度のメシより好きなパソコンに
さわることを禁じられたのだった。


とはいえ、
わたしがユインの部屋をのぞいたのは、


しょげかえっているであろう
ユインをなぐさめるためではなく、


わたしにも、
ユインに確かめておきたいことが
あったからだった。


ユインのベッドにならんで腰かけた。


「ユイン、よく物を忘れるよね」


「そうだよね」


自覚はあるらしい。


「じゃあ、昨日、何の日だったか知ってる?」


「うん、それ、ちょっと」


「えっ、知ってたの?」


「うん、今日、学校で友だちが言ってたから」


「なんて言ってたの?」


それには答えず、ユイン、


「昨日は、みやこちゃんにカードあげなくてごめんね」


「いいんだよ。母さん、カードなんかいらないもん」


正直な気持ちである。
なぜなら、ユインがくれるわたしへのカードは、
イアンが買ってきてユインに書かせているからだ。


そのイアンの心配りにわたしは感謝している。
けれども、わたしはイアンの母親ではない。
わたしはユインの母親なのだ。


だから、「母の日」にユイン経由で
イアンからカードをもらっても
心の底から嬉しいという気持ちにはなれない。


いったい、イアンは一生、
わたしに「母の日」のカードを
贈り続けるつもりなのだろうか。


わたしは一生、
ユインから「母の日」のカードを
受けとることはないのだろうか。


今年こそ、
はっきり言おうと思っていた。


「母の日」のカードは買わないでと、
イアンに。


そして、
「母の日」にはチョコレートか花束をと、
ユインに。


ところが、
うっかり忘れてしまっていた。


気がついたのは、
「母の日」当日のことだった。


すでに遅かったと思っていると、
奇妙なことに、「母の日」は
いつもの日曜日と変わることなく
あっけなくすぎさっていった。


ということは、
今年の「母の日」には、
ユインからチョコレートも花束も
贈られることはなかったが、


少なくとも、
イアンから「母の日」のカードを
受けとることもなかったわけである。


そのことが確かめられればじゅうぶんだ。


これで、来年も、もうその先ずっと、
イアンが「母の日」のカードをユインのために
買い与えることはないだろう。


並んで腰かけている
ユインのベッドから腰をあげようとするわたし。


ところが、
そのわたしより一瞬早く
ユインがベッドから飛びおりると、


「ごめんね。ちょっと忘れてて」


何をごそごそ、
机の上に山積みになった
オモチャや文房具や衣類や本を
ほじくり返しているのだ。


「へへっ。ここに隠してあったんだ」


ユインがさし出したのは、
まちがいなくカードの入った封筒。


「これ、みやこちゃん、ほしーい?」


と、
手わたしてくるではないか。


「まだ、何も書いてないんだけどね」


って、何なのよっ。


「ユイン。
それっ、トーサンが買ってきたんでしょ!」



「てへへっ」


「で、ユイン、書き忘れてたんだね」


「てへへっ」


「何も書いてないなら来年にとっといたら」


「ああ、そうだねえ~」


いかにも名案だというふうに
目を輝かせるユインの表情が、
その一瞬のあと、かきくもった。


「でも、みやこちゃん。
このこと、トーサンには言わないでくれない? 
お願いだから



そうだよね。
こんなことがトーサンに知れたら、
この先1年くらいはパソコン禁止令解けそうにないもんね。


「母さん、何も言わないよ」


「ありがとう~」


そんなにまゆ毛八の字にさげて、
手を合わせておがまなくてもいいよ。


「でも、変よねえ~」


何がという顔つきをするユイン。


「トーサン。どうして気がつかないんだろ。
自分で買ってユインに手渡しておいたカードが、
『母の日』になっても、『母の日』をすぎても、
母さんに贈られてないの」



「そりゃあ、遺伝だからねえ」


と、ユイン。


「だから、ぼくがこんなに物忘れするんだよ」 


なるほど。
それで、きれいにつじつまが合う。


「でもさ。トーサン。
来年、また『母の日』のカード買うのだけは、
絶対に忘れないと思うな」



「そうかなあ」


「そうだよ。
街のあちこちにいやってほど宣伝出るじゃあない」



「あっ、そっか」


こうして、
毎年繰り返してきた「母の日」の苦悩は、
また来年へと持ち越しになったのだった。


そして、それからイアンと顔を合わせるたびに、
喉もとを越えようとする「母の日」という言葉を、
ユインの八の字まゆ毛を思いうかべては
ぐっと飲みくだしながら、


どうしてこの世に「母の日」なんてものが存在するのか、
どうして母であるわたしが「母の日」に
こうももてあそばれねばならないのか、
もんもんと苦悩する今日このごろなのである。









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