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湖水地方ケズィック
2007/08/25(Sat)
わたしたち一家は、イングランド北部の東海岸に近い
ニューキャッスルに住んでいます。
湖水地方は、同じ北イングランドの西側に位置しています。


昨日ご紹介した「天国に1番近い町アルストン」のある
ペンナイン山脈をへだてた、ちょうど反対側同士という
位置関係にあるわけなのです。


車だと、2時間半もあれば行くことのできる距離なのですが、
わたしたちは、一家で湖水地方へ出かけたことがなく、
たったの1度だけ出かけたのは、ユインが生まれるずっと以前、


結婚当時、「イギリスのおへその町」ホールトフィッスルに
住んでいたころ、イアンとふたり、日帰りで出かけただけなのでした。


そのとき、街へ車を乗り入れるなり大渋滞、
通りのわきの歩道には、観光客があふれかえっていて、
当時、北イングランドの片田舎で暮らしていたわたしたちは、
たちまち、その人波に酔ってしまったのでした。


さすがは、世界にその名を知られる湖水地方!
と、恐れ入ってしまい、以来、ずっと恐れ入ったまま、
15年間近づけずにいたわけなのでした。


ですが、どうして、
この夏に訪れてみようかなという気になったかと言うと、
春に、日本へ一時帰国したときに、
飛行機の中で、映画「ミス・ポター」を見たからなのでした。


そう言えば、ピーターラビット・シリーズの生まれた家
「ヒルトップ」をわたしはまだ見ていない。
いやいや、外から見たことはあるのだけれど、
足をふみ込んだことがない。


イギリス国内の、しかもこんなに近くに住んでいるのだから、
やっぱり、一生に1度くらいは、見ておいてもいいのじゃあないか。
と、まあ、思ったわけなのでした。


イアンの人ごみ酔いも、そろそろさめているころ合い、
ふたりでお出かけするには、ちょうどよい距離でもあったので、
今回は、B&B(民宿)に一泊して、15年ぶりの湖水地方を
観光してまわろうということになったのでした。


このような事情で、ペンナインの山ごえをして、
まずは、湖水地方の北の玄関口ケズィック(Keswick)の街の
駐車場へ車を乗り入れたわたしたち。


今回は、学校の夏休み前ということもあってか。
以前経験したような車の渋滞と人ごみはなかったのでしたが、
ペンナインの山の上では、雲間から青空ののぞいていたお天気が
ケズィックの街に乗り入れるなり、どしゃぶりの大雨に……。


ケズィックには、
ヨーロッパで1番美しい景色のひとつがのぞめる丘があるというので、
その丘の上からの絶景をさかなに頬ばろうと準備してきたお昼のおにぎり、
駐車場にとめた車の中で胃袋におさめ、


念のためにと準備してきた傘を片手に、
ケズィックの街へとさまよい出たわたしたちなのでありました。
とりあえず、入ってみたのは、観光案内所。



通りの真ん中に建つこの観光案内所。
反対側にも、入り口がありました。



観光案内所で、街と近辺の地図を手に入れると、
街の通りをぶらついてみることに……。



軒先や窓べのお花が印象的……。















いくぶん雨あしが弱まってきたようなので、
街のはずれから少しばかりのぼりつめたところにある
キャッスルヘッド(Castle Head)の丘に行ってみることにしました。


ぬかるんでぐちょぐちょ、雨でぬれた岩がつるつるの
足もとの悪い小道を、えっさかおっさかのぼっていくと、
視界がひらけ、眼下にダーウェント・ウォーターの湖面が見おろせました。



お天気が今いちなので、
景色の方も今いちなのは仕方がないのですが、



う~む。
これが、ヨーロッパで1番美しい風景のひとつなのか~。
と、顔を見合わせるイアンとわたしなのでありました。


けれども、ながめてみて、とりあえず納得のいったわたしたち、
今度は、湖畔の方へおりてみることにしたのでした。


湖水地方を訪れる観光客の95%は、
駐車した車から半径50メートルの範囲内にとどまっているという
統計があるのだそうですが、
それを証明するかのように、丘から湖畔への道、
ひとっこひとり人影を見ることはありませんでした。



湖畔にたどりつくころには、すっかり雨があがり、
お日さまが顔をのぞかせて、少し歩いたせいもあってか、
さっきまで肌寒かったのがウソのようにあたたかくなってました。


そして、湖畔には、人待ち顔のボートが……。




「乗ってみるかい」


「うん」


実は、15年前の夏にも、湖水地方でボートに乗ったのでしたが、
わたしもイアンも、どの湖で乗ったのかの記憶がさだかではありません。
イアンは、ここじゃないのかと言うのですが、
わたしには、まったく見覚えがないのでした。



ところが……。



イアンがあやつるオールが水をかき、
ボートが岸を遠くはなれていくにしたがって、
どことな~く、見覚えのあるような感じが……。



そして、


「ここよーっ。絶対に、ここっ!」


わたしの記憶の底から、
鮮やかな色彩にいろどられたこの丘が
うかびあがってきたのでした。



わたしの記憶の中のこの丘の斜面は、
一面赤紫のへザーの花におおわれているのでした。
ちょうど、今は暗くくすんだ色に見えている部分の斜面が、
目にしむような赤紫にそまっていたのでした。


まだ時期が早すぎるのか、今年の悪天候のせいなのか、
今見る丘にヘザーの花は影も形もないのでしたが、
かつてこの丘で目にしたヘザーの花ざかりが、
わたしがヘザーの花を目にした最初だったのです。


何だかうれしくなってしまったわたし、
あまり期待をだいていなかった湖水地方見物が
がぜん楽しみになってきました。


そう思うと、湖畔でくり広げられている
こっけいな風景が目に飛びこんできました。



マイクロバスの前から、がんとして動こうとしないアヒルを
おどしつけて追いはらおうとする人や、



アヒルに埋もれてしまった親子など、
アヒルとたわむれる人々が観光客の注目をあびていました。


街の駐車場へ帰る道々では、



またひとつ、記憶の底からよみがえってきた場所に遭遇(そうぐう)して、



「ここで、アイスクリーム食べたよね」


イアンが、そうかなという顔をするのですが、
絶対にまちがいありません。
ただ、どうしたわけだか、この日は、
アイスクリーム屋さんは見あたりませんでした。


このあと、駐車場から車に乗りこんだわたしたち、
ウィンダミア湖の北岸の街アンブルサイド(Ambleside)をさして、
一路南へと車を走らせたのでした。





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