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「母の日」の苦悩
2014/01/21(Tue)
家族が
それぞれの思いをつむぐ
「母の日」。


しかし、それは、
「母の日」以前に
すでにはじまっていた。


そして、
その全容が発覚したのは、
「母の日」の翌日のことだった。


イアンが雷を落とした。
前夜、イアンが準備していた校への書類を
家に忘れていったうえに、
先週の宿題を再び持ち帰るのを忘れたユイン。


丸一日、
三度のメシより好きなパソコンに
さわることを禁じられたのだった。


とはいえ、
わたしがユインの部屋をのぞいたのは、


しょげかえっているであろう
ユインをなぐさめるためではなく、


わたしにも、
ユインに確かめておきたいことが
あったからだった。


ユインのベッドにならんで腰かけた。


「ユイン、よく物を忘れるよね」


「そうだよね」


自覚はあるらしい。


「じゃあ、昨日、何の日だったか知ってる?」


「うん、それ、ちょっと」


「えっ、知ってたの?」


「うん、今日、学校で友だちが言ってたから」


「なんて言ってたの?」


それには答えず、ユイン、


「昨日は、みやこちゃんにカードあげなくてごめんね」


「いいんだよ。母さん、カードなんかいらないもん」


正直な気持ちである。
なぜなら、ユインがくれるわたしへのカードは、
イアンが買ってきてユインに書かせているからだ。


そのイアンの心配りにわたしは感謝している。
けれども、わたしはイアンの母親ではない。
わたしはユインの母親なのだ。


だから、「母の日」にユイン経由で
イアンからカードをもらっても
心の底から嬉しいという気持ちにはなれない。


いったい、イアンは一生、
わたしに「母の日」のカードを
贈り続けるつもりなのだろうか。


わたしは一生、
ユインから「母の日」のカードを
受けとることはないのだろうか。


今年こそ、
はっきり言おうと思っていた。


「母の日」のカードは買わないでと、
イアンに。


そして、
「母の日」にはチョコレートか花束をと、
ユインに。


ところが、
うっかり忘れてしまっていた。


気がついたのは、
「母の日」当日のことだった。


すでに遅かったと思っていると、
奇妙なことに、「母の日」は
いつもの日曜日と変わることなく
あっけなくすぎさっていった。


ということは、
今年の「母の日」には、
ユインからチョコレートも花束も
贈られることはなかったが、


少なくとも、
イアンから「母の日」のカードを
受けとることもなかったわけである。


そのことが確かめられればじゅうぶんだ。


これで、来年も、もうその先ずっと、
イアンが「母の日」のカードをユインのために
買い与えることはないだろう。


並んで腰かけている
ユインのベッドから腰をあげようとするわたし。


ところが、
そのわたしより一瞬早く
ユインがベッドから飛びおりると、


「ごめんね。ちょっと忘れてて」


何をごそごそ、
机の上に山積みになった
オモチャや文房具や衣類や本を
ほじくり返しているのだ。


「へへっ。ここに隠してあったんだ」


ユインがさし出したのは、
まちがいなくカードの入った封筒。


「これ、みやこちゃん、ほしーい?」


と、
手わたしてくるではないか。


「まだ、何も書いてないんだけどね」


って、何なのよっ。


「ユイン。
それっ、トーサンが買ってきたんでしょ!」



「てへへっ」


「で、ユイン、書き忘れてたんだね」


「てへへっ」


「何も書いてないなら来年にとっといたら」


「ああ、そうだねえ~」


いかにも名案だというふうに
目を輝かせるユインの表情が、
その一瞬のあと、かきくもった。


「でも、みやこちゃん。
このこと、トーサンには言わないでくれない? 
お願いだから



そうだよね。
こんなことがトーサンに知れたら、
この先1年くらいはパソコン禁止令解けそうにないもんね。


「母さん、何も言わないよ」


「ありがとう~」


そんなにまゆ毛八の字にさげて、
手を合わせておがまなくてもいいよ。


「でも、変よねえ~」


何がという顔つきをするユイン。


「トーサン。どうして気がつかないんだろ。
自分で買ってユインに手渡しておいたカードが、
『母の日』になっても、『母の日』をすぎても、
母さんに贈られてないの」



「そりゃあ、遺伝だからねえ」


と、ユイン。


「だから、ぼくがこんなに物忘れするんだよ」 


なるほど。
それで、きれいにつじつまが合う。


「でもさ。トーサン。
来年、また『母の日』のカード買うのだけは、
絶対に忘れないと思うな」



「そうかなあ」


「そうだよ。
街のあちこちにいやってほど宣伝出るじゃあない」



「あっ、そっか」


こうして、
毎年繰り返してきた「母の日」の苦悩は、
また来年へと持ち越しになったのだった。


そして、それからイアンと顔を合わせるたびに、
喉もとを越えようとする「母の日」という言葉を、
ユインの八の字まゆ毛を思いうかべては
ぐっと飲みくだしながら、


どうしてこの世に「母の日」なんてものが存在するのか、
どうして母であるわたしが「母の日」に
こうももてあそばれねばならないのか、
もんもんと苦悩する今日このごろなのである。









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