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イギリスで手術をうけてみた 10
2007/09/21(Fri)
わたしのベッドが病室へ運びこまれると、
手術前には、病室に入れてもらえなかったイアンが、
ひょっこりと姿をあらわしました。


いったんうちへ帰り、ユインと昼食をとったイアン、
大急ぎで病院へひき返してくると、
待合室で待機してくれていたのでした。


「ハウ アー ユー?」


「アイム ファイン」


にかっ。


「って、まあ、痛いけどね。
ほら、これ……」



そうろりと足もとのシーツをめくって、
腿(もも)まで包帯でがんじがらめになった脚を見せ、


「でも、思ってたよりずっと、まし」


にかっ。


「そっか。それは、よかった」


にかっ。


「ジャパニーズティー、飲まないか」


ごそごそとバックパックの中から、
フラスク(保温ボトル)をとり出したイアン。
なんでまた、日本茶なんか思いついたのかな。


「熱湯は使わなかったからな」


日本茶なんかいれたことないのに、
よく熱湯は使わないって覚えてたね。


「ありがと。
でも、まあ、今は、いいかな」



病室に帰ってきたときに、看護師さんも、
紙コップに、半分くらい入った炭酸入りの栄養飲料を
手わたしてくれて、


「トーストとお茶はいかが?」と聞いてくれたのでしたが、
辞退していたのでした。
前夜から、何も食べていないというのに、
どうしたわけか、まったく空腹は感じないのでした。


それに、全身麻酔のあいだ、
のどにさしこまれていたチューブのあとが痛んで、
何かをのみくだすのがどうもおっくうなのでした。


それから、イアンに、
イアンと別れたあと、わたしの身の上におこったことを
あれこれ話していると、


再び、担当の看護師さんがあらわれて、
鎮痛剤、医療用テープ、
翌日から使用する医療用ストッキングなどの入った封とうと、
退院後の手びきのプリントされている用紙をわたしてくれました。


そして、もう1度、
「トーストとお茶はいかが?」と聞いてくれたのでしたが、
やっぱり、答えは、「ノー サンキュー」……。


看護師さんの姿が消えると、


「でも、ちゃんと食べないと退院されてくれないぞ」


と、イアンが言うもので、
じゃあ、ちょっと食べてみるかという気になってきました。
というのが、そのころには、全身麻酔からさめた直後に飲んだ
鎮痛剤が効きはじめたらしく、


のどの痛みも、脚の痛みの方もずいぶん楽に感じられ、
もしかしたら、これなら、もう自分の脚で歩けるかも、
うちに帰れるかもなんて思ったりしたのでありました。


「じゃあ、トースト食べてみる。
でも、バターや、マーガリンがぬってあったらやだな」



と、言ったら、イアンが、
何もぬられていないドライトーストを頼んできてくれて、
お茶は、イアンがうちでいれてきてくれた日本茶で、
帰宅にむけてのお腹ごしらえをしたのでした。


久しぶりに食べるトーストはこうばしく、
日本茶の香りは、新鮮で、どうしようもなくあたたかく、
あらゆるもの、あらゆる人々への感謝の気持ちが
こみあげてくるような気がしました。


イアンの言ったとおり、
軽いお昼をとると、後は、もう退院という手はずのようです。
トーストのトレーを引きあげにきてくれた看護師さん、


「じゃあ、着がえてくださいね。
でも、その針は、念のため、まだ残しておくことにしましょうね」



と、言われて、
おやおや、そう言えば、まだ、わたしの左の手の甲には、
麻酔液を入れるためにさした針がテープでとめられたままに
なっていたことを思い出したのでありました。


やっぱり、わたし、ほんとうのほんとうに手術したんだ。
どうも実感のないまま、そう思っていると、
着がえをするのに身をおこしたベッドの白いシーツの上、
ちょうどわたしの寝ていた背なかあたりに



血のにじんだ、しみが~っ!



そっと、指でなぞってみると、
すでにかわいていたのでしたが、
思わず、自分の背なかをさわってみないではいられない。


どこも、痛くもかゆくもないし、
創(きず)があるようでも、
何か、はりつけてあるわけでもありません。


でも、これって、わたしの血のはずよねえ~。
もし、そうでなかったら、もっと怖い~。


なんか思いながら、
背なかで結んである手術着の腕をぬき、
頭からぬいだ、その手術着の背なかにも、
血のにじんださらに大きめのしみがついていたのでした。


きっと、手術の最中か、直後に、
脚の創(きず)から流れでた血が、背なかについちゃったんだ。
手術したんだもんね。そりゃ、血も出てたはずだから、
と、やっぱり、手術をしたんだという確信を深めていくわたし。


そうして、着がえをすませ、書類にサインもすませると、
看護師さんが、


「じゃあ、もう針をぬいてしまいましょう」


と、わたしの手の甲から、
するりとぬいてくれた針を見て、
再び、ぞぞぞ~っ……。



そ、そんなに長いの入ってたんですか~っ!



3センチくらいはあったような。
しかも、その針には、べっとりと血糊が……。


手術したんだもんね、手術しちゃったんだもんね。
まったく、えらいことしちゃったもんだ。
でも、もう、手術は終わってうちへ帰るんだもんね~。


ところが、やっぱり、いざとなると、
手術したての脚で立つことはできず、車イスをかりて、
イアンに押してもらって病室から階下へ。


こうして、その日の朝、8時前に、
イアンとふたりでくぐった病院の正面玄関を、
午後2時半すぎにはあとにしたのでありました。


イアンが駐車場に車をとりにいっているあいだ、
病院の玄関先の車イスの上から見た空は青く明るくかがやいて、
目にしむような美しさでした。


昨日までとは、どこかちがうかのようなその青空を、
見あげているわたし自身も、
昨日までとは、ちょっぴりちがうような気がするのでした。










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