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イギリスで1番おいしいブラックプディング 2
2007/11/21(Wed)
イギリスで1番おいしいと評判のブラックプディングを売る店の
まある~いイアンおじさん、
ブラックプディングを売ることなどそっちのけで、


「あんたがた、どこに滞在しておられるの?」


と、いかにも純朴そうな地元訛(なま)りの英語で、
しかし、いやに熱心に、
わが家のイアンに質問してくるのであります。


はたと言葉につまったわが家のイアン、
同じスコットランドでも、グラスゴーの都会育ちに、
田舎の島の訛りが理解できないというわけではないのだけれど、


そして、滞在しているコテージの予約ととったときには、
コテージの住所は目にしたはずなのだけれど、
そんなの覚えているはずもなく、


コテージの丘のふもとにたっている案内板に記されている
そのあたりの地名も、幾度とはなく目にしているのだけれど、
これが、スコットランドの古語ゲール語なもんで、


英語読みでは、まともに発音できないうえに、
おまけに、めったやたらに長いときているので、
頭に入ったものじゃあない。


そんな事情で、言葉につまっているうちのイアンに、


「もしかして、ターバットの近くじゃあなかろうか」


と、ブラックプディング屋のイアンが、
助け舟を出してくれたので、


「そう。そうだ。そのとおりっ!」


思わず相づちを打ってしまったうちのイアン。


たぶん、うちのイアンが知っている地名では、
わたしたち一家が、この島へ上陸したフェリー乗り場のある
ターバットが1番近かったのだろうけど、


でもさ。イアンちゃん。コテージからターバットまでは、
車で、30分近くかかっちゃう距離なんじゃないの。
と、心の中で、つぶやくわたし……。


そんな、わたしの心の中のつぶやきをよそに、
ブラックプディング屋のイアンおじさんの目が、
キラリッと輝いた。


「おおっ。もしかしたら、そうじゃあないかと
思っとったんだがね~」



まあるい顔をほころばせて、
そう言ったあと、口調をあたらめ、


「実は、今、ちょっと困っとってねえ」


と、ふらりと店にたち寄った一介の客であるうちのイアンに、
ブラックプディング屋のイアンおじさんが持ちかけた話というのは、


実は、ターバットにあるホテルまで届けねばならないものがあって、
配達をたのんであるのだけれど、おりからのこの大雨のせいか、
今もって集荷にきてくれない。


そこで、申し訳ないが、ターバットの近くに滞在しておれれるなら、
ひとつ、このダンボール箱をターバットのホテルまで
届けてもらえないだろうか。



どんっ! 



と、カウンターの上におかれたダンボール箱。
大きさは、30×40×30センチくらいですが、
かなりの重量感……。


すると、うちのイアン、


「お安いご用だよ」


って、えっ! イアンちゃん。
このストーノウェイからコテージまで1時間、
それから、ターバットまでは、さらに南へ30分の距離なんだよ~。
往復すると、1時間もかかちゃうんだよ~。


「ほうっ。助かった~。
なにしろ急ぎなもんで困ってたところだったんだがね」



大きな肩の荷をおろしたかのように、ひと息ついたら、
どうやら、やっと商売の方を思い出した
ブラックプディング屋のイアンおじさん、


「それで、ご注文は、何だったかね」


「ブラックプディングを半ダース」


ヘイヘイとばかりに、ショーウインドーの中から、
ブラックプディングをとり出すと、
慣れた手つきで袋に入れて、


「はいっ。お待ちどうさん」


そのずしりと重いブラックプディングを受けとった
わが家のイアンが、


「いくら?」


と、問うと、
今度は、ブラックプディング屋のイアンが一瞬、口ごもって、
お代を計算しているのかなと思ったら、


「いいよ。いいよ。
こっちも配達たのんでるんだから」



なんてことになっちゃって、
イギリスで1番おいしいブラックプディングは、
ただでもらえちゃったわけなのでした~。

P8070144a.jpg

それにしても……。


店の商品の配達か、それともプライベートの届けものなのかは知らないけど、
いずれにしても、ふつうは、ふらりと訪れた一見客に配達なんか頼まないし、
どこの馬の骨ともわからない客に、急ぎの届けものを持ち逃げされるかもって
考えてみないのかなあ、みないんだろうなあブラックプディング屋のイアン。


それに、たしかに大雨ふってて観光どころじゃあないと言ったって、
やっぱり、島のガソリン代は、バカ高だとぶーぶー不平をならしていながら、
どうして、大雨の道1時間もよけいにぶっと飛ばさなけりゃあならない用事を
いやな顔もせずにほいほい引き受けちゃうんだわが家のイアン。


これって、スコットランドはヘブリディーズの島生まれの気質なのか、
(うちのイアン、育ちは、グラスゴーの都会育ちですが、
生まれは、ヘブリディーズの島のひとつマル島)
それとも、イアンっていうのがそろいもそろってお人よしの代名詞なのか。
まったく、どっちもどっちだな~と、あきれてしまいました。


ところが、預かったダンボール箱を車に積みこんでターバットへ直行し、
届け先のホテルをさがすと、そのホテルは、
前日の日曜日、公衆トイレまで閉まっちゃってて立ち往生していたわたしが
お世話になったマクラウド・ホテルだったのです。


ホテルの厨房(ちゅうぼう)に、ダンボール箱をとどけてきたイアンによると、
えらい感謝されて、丁重なお礼の言葉をかけてもらったとのこと。
いやいや、お礼の言葉はかけずに失礼しましたが、
わたしも、前日の一件では、このホテルにいたく感謝いたしました。


そして、そのとき、ふと、頭にうかんだ言葉は、
「情けは人のためならず」。
もしかすると、これも、何かの縁(えにし)なのかも……。


まだまだこの世の中、目には見えない情けというものが、
あちこちで縁(えにし)の糸をつむいでまわっているのやもしれません。


そう思うと、バケツをうつすような大雨の、
8月の上旬にもかかわらず、日中気温は10℃という寒々とした日の午後に、
ふいに、心にあたたかいものがともるのを感じたわたしなのでありました。


それでも、そんな人の情けも、無情の天にはとどくべくもなく、
ターバット経由でコテージのふもとへ帰りついても、
雨あしは、まったく弱まる気配も見せず、


わたしたち一家3人、スーパーで買った食糧を分担してもち、
とくに、ユインは、2リットルのウォーターボトルを3本背おって、
片道徒歩20分の道なき道をコテージまでとぼとぼ歩いているうちに、
すっかりおシャカさまになってしまったのでありました。



コテージに帰りつくと、イアンが、
石炭を燃料とする暖房具兼調理具に火を入れ、
(アガってのが有名なのですが、これは、スタンレーという名まえで、
どうやら、あまり調理具としての用はたさないのでした)
セントラル・ヒーティングも入れてくれました。


ちなみに、画像左上にぶらさがっているのは、
しずくのしたたるズボン。
その夜、天井の梁(はり)やラジエーターには、
しずくのしたたる衣類がオンパレードになったのでありました。
やれやれ……。


ところで、
イギリスで1番おいしいブラックプディングは、
次の日の朝食に、イアンがグリルしてくれ、
トーストといっしょに、わたしたち一家の胃袋におさまりました。


食べなれているブラックプディングにくらべると、
サイズは、巨大で食べごたえあり。
スパイスがひかえめで、素材の味が生きていて、


そうかあ。
これがイギリスで1番おいしいブラックプディングなのかあ~。

ってお味でした。


言いかえると、このブラックプディングを求めて、
わざわざルイスとハリス島を訪れるほどではないけれど、
ルイスとハリス島を訪れたなら、
試してみる価値は大いにありってお味なのでありました。





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