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ついに歩きにいけたアドベンチャラスな1日
2007/12/07(Fri)
夜中、目をさますと、
うすめにあいていたカーテンのすきまから
明かりが……。


こんな夜中に、
外が明るいって……?


窓べによってのぞいてみると、
コテージの前のロッホ・シーフォース(Loch Seaforth)の
鏡のような海面が光っている。


そして、正面の岩山の上に、
蜜色のかがやきを放つ三日月が……。
そのまわりに、点々と星。


その大粒のきらめきが、
漆黒(しっこく)の闇の空を、
白銀のしずくでしっとりとぬらしている。


窓をおしあけ、手のひらをさし出すと、
その中に、したたり落ちてきそうなほど、
天が近い……。




次の朝、目をさましてみると、
その夜の光景が夢でなかったことを教えるかのように、
この島へ来てはじめての朝日が照っていたのでした。


空の片はしには、厚い雲もうかんでいるし、
あいかわらず肌寒いけれど、今日こそは歩きにいけると思うと、
ピクニックのおむすびを結ぶ口もとから、
はな歌のひとつもほころびようというもの……。


このコテージの大家さんによると、
コテージの以前の持ち主は、
郵便配達屋さんだったとのこと。


車で半時間ほどのターベットの郵便局まで、
近道とはいえ1時間の山道を歩き、終日郵便配達をして、
また、1時間歩いて帰ってきていたのだとか。


丘のふもとまででも、20分もかかってしまうわたしたち、
というか。わたし……。
峠をふたつばかり越さねばならないターベットまで行くとなると、
片道軽く3時間はかかってしまうだろうということで、


とりあえずは、丘のふもとからターベットにむかう道をとり、
でも、山越えをしてターベットへは行かずに、



「この半島の岬の突端まで行ってみよう~」


と、イアンが言うので、
その方が、景色もよさそうだし、


「うん。そうしよう~」


と、話がまとまったわけなのでありました。


いつものように丘のふもとまでおりると、
今度は、その向かいの丘をえっちらおっちらのぼっていって、
ふと足を止め、ふり返ってみると、



正面眼下に、毎日、コテージから越えてくる丘と、
その背後に、ロッホ・シーフォース(Loch Seaforth)の入り江、
それから、コテージの正面から見える対岸の丘が見おろせたのでした。


でもって、再び、むき直って丘をのぼりつめると、



こちらにも、太古の氷河でけずられて形づくられた
深い入り江が見おろせました。


こうして、コテージの前のオーナーの郵便屋さんが
毎日通った小道を、さらに、ずんずん進んでいって、
峡谷をわたり、



丘の稜線を岬の突端までのびる小道を歩こうとしたのでしたが、
いつしか、丘の尾根には、低い空がおりてきて、
尾根周辺を白く煙らせ、雨をふらせているもので、


稜線の道を行くのは断念して、
雨の落ちてこない丘の斜面をはう道を
岬の突端へと歩きはじめたのでありました。


わたしたち以外、人っ子ひとりいない緑の丘を行くと、
谷あいに、寂しげなおももちでたたずんでいる
石造りのコテージの廃墟を見かけて探検したあと、


見はらしのよい岩場で、お昼のおにぎりをほおばっていると、
厚い雲の切れまから青空がのぞきはじめたので、
3人でごろりと横になって、日光浴……。


ああ、お日さま、照ってきて気持ちがいいなあ~。
と、思いながら、うとろうとろしていて、
はっと目をさますと、


今度は、ぶるんっと身をふるわせるほど寒いので、
体をあたためるために、再び歩きはじめました。


いつものように、イアンは、ときどきたち止まっては、
あたりの地形を確認し、地図にコンパスをあてて、
わたしたちの行く道を決定していきます。


ですが、自分は地図が読めると確信しているイアン、
ちゃんと整備のしてあるメインルートではなくて、
よりアドベンチャラスな道なき道を選んでいくので、
ついには、それが、地図に記されている小道なのか、
地図上には記載されていない小道なのかがわからなくなり、


いつしか、まったく、とんでもない場所へ
迷い込んでしまってたなんてことがままあるのでした。
そして、今回もまた、その例外ではなかったのです。


たしかに、ウォーキングブーツの靴の跡がひと組、
そのブッシュのあいだをぬう泥土の上に残っているので、
そう遠くない以前に、だれかが通ったことはたしかなのでしたが、


もし、そのひと組のウォーキングブーツの跡がなかったら、
それが小道だとも認識できない獣道(けものみち)のような
ひざまでブッシュに埋まっている道なのでした。


しかも、切りたった丘の急斜面の中腹、
ふみしめている足もとのきわには、
くらくらするような急勾配の谷底が見おろせるもので、


できるだけ谷底の方は、
視界にはいらないように心がけて歩いていると、
突然、ブッシュの小道がとだえている場所に
行きあたってしまいました。


ブッシュがとだえた先は、岩場になっていて、
その岩の斜面を水が流れ落ちています。
水が流れ落ちている岩の部分には、
ぬめぬめとしたコケが生えていて、


不用意に、そんな部分に足をのせでもしたら、
いかにもつるりと足をすべらせそうな、
そして、もしすべらせたら、
直滑降で峡谷の底へまっさかさまというような、


おぞおぞと寒気のする、
とんでもないと言ったらこの上もなくとんでもない場所へ、
わたしたち一家、行きついてしまったのです。


これまで、イアンのナビゲーションの末に、
とんでもない場所に迷いこんでしまったとしても、
泥まみれか水びたしになるのがせいぜいで、
命の危険を感じるようなことなんてなかったのに~。


と、わたしがおじけづいているあいだに、
水の流れる傾斜のある岩場を用心深くとびこえ、
イアンは、対岸のブッシュの地面に立っていました。


そして、ユインに、まず、どこにどちらの足をついて、
次に、どこ着地するのだと説明し、
手を広げて、ユインが渡ってくるのを待ってます。


えっ。ユイン。行くの~。
高所恐怖症のユインが、
まさか、何十メートルもある谷底を見おろす
崖っぷちの岩場をとびこえていくなんて~。


でも、いっちゃったので、岩場のこちら側には、
わたしひとりがとり残されてしまったのでした。


来た道をひき返すのが、
とてつもなく大まわりになることくらいわかってはいるけど、
こんなすべり台より傾斜が急な岩場を命がけでわたっていくより
いいじゃあないの~。


びびりまくるわたしに、イアン、


「まず、そこに足をつくんだよ。
そのあと、ぴょんととべば、受けとめてやるから」



えっ。だって、そこに足をつけったって、
ばしゃばしゃ水が流れてて、
見るからにぬるぬるしたコケが生えてるじゃ~ん。


わたしの頭の中には、
コケの上で、つるんと足をすべらせた自分が、
水の流れといっしょに目もくらむような谷底へと
転落していく姿が~。


「だ、だ、だめだよ。できないよ~」


半泣きになってしまったわたしに、
いつになく声をあららげて、イアン、


「いつまでも、そんなところにいたら、
ミッジに噛まれるばかりだろっ!
ほらっ、オイデッ!」



そんなのわかってるよ~。
鬱蒼(うっそう)とした水辺を好むミッジが、
わたしにたかるように飛びまわっているのも、


すでに、皮膚の露出している部分だけではなくて、
どうやら首のすきまから入ってきたミッジが、
胸もとまで侵入してきているものわかっている。


そして、わたしが躊躇(ちゅうちょ)し、
一瞬でも長くその場にとどまっていればいるほど、
ミッジの餌食(えじき)になるのだということも、
よくわかっているのでした。


だから、ミッジの集団にたかられていなかったら、
わたしの足はすくんだままで、とてもその急勾配の岩場を
とびこえるだなんてことできなかったにちがいありません。


「ミッジに噛まれるばかりだろっ!」
と、イアンの叫ぶ声を聞いたあと、
ふっと足が岩場の水の上に、


そして、水の流れるコケをふんだとき、
足の下にるつりとした感触は感じだのでしたが、
その足をけって、イアンの腕の中へとぶことができたのでした。


このようにして、
何とか窮地(きゅうち)を脱することができたわたしなのでしたが、
あとになって、イアンが言ったことには、


「まったく、あんな場所を、ロープを使わずにわたったって、
無謀(むぼう)だったよなあ~」



って、イアンちゃ~ん。


イアンは、軍隊時代に、
新米兵士の野営訓練のインストラクターを
していたのでしたが、


そのイアンが言うには、
わたしたちが遭遇(そうぐう)した岩場のような場所をわたるときには、
一方を岩や木の幹などににしばって固定したロープにつかまるとか、
ロープを腰にまいてわたるべきなのだそうです。


このあとも、もうひとつ水の流れる岩場があったのですが、
以前のにくらべるとたいしたことはなく、
さいわいなことに、それからほどなく、人のふみしめた跡のある
メインルートの小道へとたどりつくことができたのでした。


だというのに、またイアンが、
こちらの方が、きっと近道だからと、
ブッシュに埋もれてその道すじもよく見えない
崖っぷちの道なき道の方へ行こうとするので、


そのときばかりは、わたし、
ガンとして、ゆずらなかったのでした。


「のぼりがあっても、遠まわりでもいい。
でも、ちゃんとした道がいいっ!」



それでも、イアンは、そんな道は退屈じゃあないかと、
口の中で、ぶつぶつ言ってみるのでしたが、
最後には折れて、わたしたち、安全な道をとって
帰途につくことになりました。


道をのぼりはじめると、雨……。
わたしたち、すぐにぐっしょりとぬれてしまったのですが、
それでも、コテージの丘のふもとまでもどってくると、


その雨が嘘のように、またカラリと晴れあがって、
再び、えっちらおっちら丘をこえてコテージにむかう道中には、
青空が広がる眼下には、青くきらめく海が見わたせました。


快い汗をかき、全身に軽い疲れを感じるくらい歩いて、
雨にも会いはしたけれど、お日さまの顔もおがめた1日、
終わりよければ、すべてよしよね~。


などと言いながら、
無事コテージに帰りついたわたしたち一家、
その夜は、終日のウォーキングのあとで、
深くて安らかな眠りをむさぼったのでありました。
めでたし、めでたし。


な~んて、そううまくいくはずはないってことは、
実は、過去の経験からよ~くわかっていた
わたしなのでありました……。





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