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しあわせの青い鳥はこの手の中に
2008/09/23(Tue)
湖水地方でサイフを落として、
路頭に迷う危機に直面したわたしたち一家、
奇跡のような幸運にめぐまれて、


その翌日には、
無事、なつかしのわが家へと
もどってくることができたのでした。


いったん、サイフが手もとにもどってくると、
サイフが手もとにあることなど当たり前のことだ
と感じる感覚ももどってきて、


湖水地方の日暮れ時に大あわてしたことなど、
すぐに遠い記憶のかなたに運ばれていったのでしたが、


その週明けからイアンが仕事に復帰し、
翌週には、ユインの学校の夏休みもあけて、
すっかりわが家にふだんの日常がもどってきても、


わたしは、やっぱり、毎日、
あきることなくイアンのようすに深刻な病気の兆候をさがし、
救いを求めて意味のないことに意味を読みとることを
やめられずにいたのでした。


イアンが車を運転する横顔を観察して、
今日は、イアンの目が赤くない。
うふふっ。


この調子ならきっとだいじょうぶと胸をなでおろして、
もう1度、イアンの方をふり向くと、


えっ。どうして、
サングラスなんかとり出してるの?


「もしかして、まぶしいの?
まぶしいから、かけるんだよね」



サングラスをかけると、
いかつい形相になるイアン、


「ほかに、サングラスに
いったいどんな用途があるって言うんだ」



こんなどんより曇った日にまぶしいだなんて、
それはちょっとふつうじゃあないよ。
それって赤血球が増える病気の症状なんだよ~。


と、心の中で嘆いても、
イアンにうるさがられるだけなので声に出しては言えず、
ついさっき抱いたばかりの希望は無残に打ちくだかれて、
ひとりで暗い気分におちいっていくわたしなのでした。


ですが、また別のときには、
壁からはずれて半分ぶらさがった状態になっていた小窓を
トンカン日曜大工で修理していたイアンの目に、
どうやら何かのかけらがたってしまったらしく、


イアンの目が見るも恐ろしいほどにはれ上がって、
白目は、血の色にそまってしまったのでした。
げげげっ。イアンちゃ~ん。こ、こ、恐ぁ~い!


でも、この目にくらべたら、
ふだん、時々充血する目の赤さなんて大したことはない。
ってことは、やっぱり、血液の病気じゃないのかも。


目をぼんぼんにはらして
眼科へかけつけるイアンを見送りながら、
なぜか安堵(あんど)の思いにひたるわたしなのでした。


そうだよ。そうだよ。
もし血液の病気だったら赤血球の数は異様に多いはずで、
1回めの血液検査ですぐに病院の専門医のもとに
送られてたにちがいないんだから……。


でもさ。血液の再検査を受けることになったのは、
血液の病気かもしれないほど赤血球の数が多いからでも
あるんだよねえ~。


自分ひとりの胸のうちで、ああだろうかこうだろうか、
いや、ああでもないこうでもないと堂々めぐりの思いに
翻弄(ほんろう)される日々をすごすうちに、
金属片のたっていたイアンの目の傷もいえて


その日が早く来てしまってほしいような、
永遠に来ないでほしいような気もしていた
イアンの血液検査の日がやってきたのでした。


結果がわかるのは、5日後……。


その5日間も、
それまでの再検査を待つ1か月と同じくらい長かったのでしたが、
クリニックに結果を問い合わせることになっていた当日、


イアンからかかってくる電話を待つのもまた、
これまでに体験したことがないほど
絶望的に長い時間だったのでした。


そして、その朝、かかってきた電話に出てみると、
それはイアンからではなく、
ユインの学校からの電話だったのでした。


(その朝のことは、
思いがけなくもシリーズ化してしまったこのお話の初回、
こちらでご紹介しています)


学校に迎えにきてほしいというユインの状態はよくわからず、
仕事で裁判所に出向いていたイアンに連絡もとれず困っていたのでしたが、
さいわい車の運転のできる友人がユインを学校まで迎えにいってくれ、
家まで送りとどけてくれたのでした。


ほんの2時間前に元気に登校していった時とは別人のような青ざめた顔に
これまで見たこともないようなクマをつくって帰ってきたユインを横にならせ、
落ちついたらいつでも病院まで送りとどけるから連絡してねと
言ってくれる友人を見送ったあと、


頭痛と吐き気を訴えるユインに水を飲ませると、
ユインはうとろうとろしはじめたのでした。
そして、2時間ばかり眠って目覚めたときには、
少しすっきりとした顔つきになって頭痛もやわらいでいたのでした。


そこへ、今度こそ、
待ちに待ったイアンからの電話がかかってきたのでした。


血液検査の結果より、ともかくユインのことを告げると、
ユインを病院へ連れていくなら自分が連れていくけれど、
もう少しようすを見ることにしようとイアンは言い、


「で、血液検査の結果の方はどうだったと思う?」


と、もったいをつけて問うのでした。


「え~っ。どうだったの~?」


この1か月も、今朝のことも、
こんなのはもうたくさ~んっ!


「いいかげんにしろ~っ!」


という叫びが喉もとを越そうとしたとき、


「だいじょうぶだったよ」


「えっ!」


「だいじょうぶだったんだよ」


「って……?」


もしかして、それって、それって、
と待ちうけているわたしの耳に、


「今度の結果は、赤血球の数は正常値の範囲にとどまってたんだよ」


というイアンの声が電話のむこうから聞こえてきたのでした。





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