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イアンの生まれ故郷マル島へわたる
2009/09/05(Sat)
7月21日(火)


天気予報によると、
午後3時ごろまで雨は来ないらしいので、
マル島へ行くことにした。


まずはフェリーでキャラバンの向こう岸へわたり、
対向車と行き違えないシングルレーンのぐねぐね道の上、
のぼりくだりもいやに激しい田舎道を
1時間40分ばかりドライブ。


途上、雄大な風景に出会って、
ついに、イギリス本島ブリテン島の最西端の地
キルホーエンのフェリー乗り場に到着する。


P1090559a.jpg


廃墟になった古城を望むフェリー乗り場には、
灰色の雲がたれこめ、寒風が吹きすさんでいて、
うらぶれた感じがただよっていた。


P1090553a.jpg


車をおいてフェリーに乗りこむ。
わたしたち一家をふくめ、
家族連れやカップル、祖父母と孫といった
20人ほどの乗客のほかに、


小型フェリーには、
車も3、4台積み込まれている。
マル島トバモリまでは35分の船の旅。
デッキは寒いので、船室のシートに座る。


P1090518a.jpg


となりにイアン、向かいにユイン。
万年睡眠不足のユインは、
ガラス窓に頭をもたせかけ、目を閉じた。


ひたいに点々とニキビがうかんでいる。
このティーンエイジャーの顔のどこかに、
12年前のあの日の面影は残っていないだろうか。


12年前の夏、わたしたち一家は、
オーバンから大型フェリーに車も積みこんで、
はじめてイアンの生まれ故郷マル島へわたった。


3歳だったユインは、興奮して船内をはしゃぎまわり、
ちょっとのあいだも座席に腰を落ちつけてはいなかった。


まったく人見知りをしない子だったので、
乗り合わせた同じ年ごろの男の子を見つけるとすぐ仲よくなって、
ソファによじのぼって鬼ごっこをはじめた。


あのころは、
ユインがこんなに大きく育つ日がくるなんて、
想像してみたこともなかったのに……。


「いつのまに、こんなになっちゃったんだろうねえ」


と、つぶやくと、
ユインが薄目をあけ、ふっとほほ笑んだ。
マル島へわたったときのことは
何も覚えていないと言う。


到着したマル島のトバモリは、
ユインにとってははじめて目にする風景だった。


P1090520a.jpg


12年前とほとんど変わっていなかったが、
BBCの子供番組シリーズの舞台になったせいか、
子供づれの観光客の姿が目だち、


以前から色とりどりに塗られていた
シーフロントの家々のペンキの色が、
一段と鮮やかになってなっていた……。


IMG_1460a.jpg


イアンが子どものときに両親が営んでいた雑貨屋は、
12年前は、おしゃれな雰囲気のただようパン屋になっていた。
今も、パン屋のままだったが、おしゃれな感じはしなくなっていた。


P1090528a.jpg


海を見おろしながら、イアンはユインに、3、4歳のころ、
ひとりで通りを横ぎって海にうかぶ船を見に行き、
海に落ちておぼれそうになっていたのを犬に見つけられ、
助けられた話をした。


その犬がいなかったら、
ユインは生まれてくることはなかった。
わたしたち一家も存在しなかった……。


P1090534a.jpg


シーフロントの通りの突端まで歩いた。
12年前と建物の構えは同じだけれど、
当時よりさらに観光客向けの店がふえていた。


P1090526a.jpg


3人ならんで歩いていた歩道に
大きな水たまりができていて、
その水たまりに、
ユインが勢いよく飛びこんだこと、


P1090533a.jpg


ケーキ屋さんのショーウインドーに
フェリーをかたどった巨大なケーキがディスプレイしてあって
3人で見入ったことなど、


P1090536a.jpg


12年前のマル島でのできごとを
思い出しては口にするわたしの言葉を
イアンは黙って聞いていた。


P1090525a.jpg


とくに言葉にはしなかったけれど、
イアンは、さらに時間をさかのぼって、
ここで暮らしていた子供時代の日々に
思いをはせているのかもしれない。


P1090543a.jpg


シーフロントの通りの突端にあった空き地が、
今は、整備された駐車場になり、
乗用車や大きな観光バスがとまっていた。


その後、通りを引き返して砲台跡のある高台にのぼった。
高台からは、埠頭につながれているフェリーが見おろせた。


「あれに乗って帰ろうか」


ぽつりとイアンが言う。
2時間後のもう1本あとのフェリーで帰る予定を変更して、
高台をくだり、1時のフェリーに乗りこんだ。


朝にくらべると風も凪(な)いで、
いくぶんあたたかくなっていたので、
景色を見渡せるデッキ席にすわった。


薄日がさしてきて、
鉛色からわずかに青みをおびた海上に、
マル島の山々や岬が遠く青くかすんでうかんでいるのが見わたせた。


「12年前よりまた一段と変わってたよなあ」


と、イアンが言ったので、
イアンにとっては、生まれ故郷のトバモリが、
今日、またさらに遠い存在になったのかもしれないなと感じた。


キルホーエンのフェリー乗り場に到着する。
乗客や車がおり、新しい乗客と車がフェリーに乗りこむ。
そして、わたしたちといっしょにおりた乗客の車が走り去ると、
フェリー乗り場には、わたしたち以外だれもいなくなった。


朝の同じ場所は、
灰色の雲のしたを風が吹きすさぶばかりの
寒々としたイメージだったというのに……。


今も、青空はないものの、風はやんでいて、
海を望むだだっ広い緑の風景の中に、
廃墟になった古城がひっそりとたたずんでいる。


P1090554a.jpg


おだやかな静けさが
ゆっくりと心の中にしみこんでくる……。


ああ、何だかいい感じだなあ。


と思った。


目を見張るような絶景があるわけでもない。
ドキドキするような興奮を覚えるわけでもない。


ただ、この風景の中にたたずんでいると、
心の中で何かがゆっくりとほどけ、
ほぐされていくものがあるのを感じるのだった……。


帰りは、
再びシングルレーンの田舎道をドライブして北上し、
マレイグからグレンフィナンへの道へ出る。


フォートウィリアムへの途上、
イギリス最高峰ベンネヴィスを望む。
いただきが雲に隠れていない稀な姿を見せている。


ところが、フォートウィリアムの町までくると、
突然、大粒の雨がボタボタとおちてきて、
通りにはカラフルな傘の花が咲きはじめる。
やっぱり、今日は登山には向かなかったようだ。



今年は、登れるかなあ。ベンネヴィス。
今年も、スコットランドへやってきたのは、
そのためなのだけれど……。





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